快適無職ライフ

はたらきたくない

【読書】リタイア無職が主人公のドストエフスキー作品

無職女が読む、無職男が主人公のドストエフスキー作品です。

 
ドストエフスキー『地下室の手記』

 

半年ほど前に、初めて読了したドストエフスキー作品が「罪と罰」でした。

 

その勢いで「他の作品もイケるんじゃ?」と思って読み始めましたが、こちらは4分の1ほどで挫折して放置していました。

自分が無職の立場になった今、無職が主人公のこの作品を思い出して読んでみると、以前と比べてすんなり読み進めることができました。

 

 

Kindle Unlimited対象作品です。(投稿日時点)

 

 

概要

役所勤めをしていたが遺産を手に入れて退職し地下室に引きこもっている男が、自意識の塊のような独白をして過去の黒歴史のようなエピソードを語ります。

この主人公、リタイア無職の典型じゃないでしょうか?

 

自意識の描写がすごいと思った作品として町田康『告白』がありますが、それとはまた違った、プライドが高くてこじらせてる男の自意識。 

 

独白の「地下室」と回想の「ぼた雪に寄せて」の二部構成となっていて、ドストエフスキー比では短めの作品です。

 

I地下室 

主人公の、なんだか理解できるようなできないような思想の独白が続きます。 

 

地下室万歳!と言ったかと思えば、やっぱりそれは嘘で、本当は別のものがうらやましい。地下室なんて、糞喰らえだ!と言ったり。「人間はピアノのキーではない」と言ったり…。

 

「自身にさえ打ち明けるのが怖ろしい思い出」を、「自分自身にはすべてを包み隠さず打ち明けることができるかどうか試したい」という前置きをして第二部の手記が始まります。

 

IIぼた雪に寄せて

二部の冒頭部分は、ほとんど全文引用したくなるほど共感しました。

久しぶりに読書でここまでの衝撃を受けました…!

 

よくこんなことが頭に浮かんだものだ。俺以外の人間は、自分が嫌な奴だと他人に思われているとどうして感じないんだろう?

 

もちろん、役所の連中のことは、どいつもこいつも一人残らず軽蔑していたが、同時にいささか怖れているふうでもあった。ときには突如として尊敬することすらあった。

 

はい、完全に私です。

 

太宰治『人間失格』を読んで「自分のことが書かれている」と思ったという経験をした方は少なくないと思います。

この作品にも、それに通じるものを感じました。

 

特に、自ら望んで無職になったりセミリタイアに辿り着く思考の持ち主であれば共感する方が多いんじゃないでしょうか。

 

その後に続く、学生時代の友人たちや途中で出会う娼婦の女とのやりとりもスゴイです。

 

自分のことを軽視している友人に対して、俺の真価を見せつけてやる!"おかしな奴だが、頭はいいな"と思わせてやる!と意気込んだりと、客観的に見ると痛々しい自意識の嵐なのですがどこか自分にも似た部分があるせいか、共感性羞恥が発動し小っ恥ずかしさを感じます。。

 

私には、この主人公のように数ある黒歴史の、どんな些細なものであっても「自分自身にはすべてを包み隠さず打ち明けること」はできそうにありません。考えただけでも恐ろしいです。

 

おわりに

解説によると、第一部10章の一番大事な部分が検閲により削除されてしまい、ドストエフスキー自身も「自己矛盾を起こしている」と言っているそうです。

今回理解が難しい部分は流し読みしてしまったので、解説を踏まえた上でいつか再読したいです。

第二部はとても好みの内容だったので、第一部で理解できる部分が増えるともっと深く楽しめると思います。

 

その頃には私も少しぐらいは過去の恥ずかしい思い出と向き合えるようになっているのでしょうか…?